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信じられない。否、予想はして居たけれど、まだ1年も経って居ないのにと……。
「ホントは、もっと前に言おうと思ってたけど。お前、マジでつまんねぇ女だな」
其処まで言わなくて良いじゃないか。別れるの一言で充分じゃないか。まるで、止めを刺すかのような彼の発言に、ミツは溢れ出る涙を抑えられなかった。
「悪いところ直すからっっ、別れないでっ……」
「もぉ無理なんだよ」
そう言って、彼は首を横に振り、伝票を取ってレジへと歩いて行った。ミツはその背中を追えず、ただ席で静かに泣き崩れた。
良かったのは、周りに他の客が居なかった事だ。こんな恥ずかしい現場を、赤の他人とは言え、誰かに見られるなんて耐え難い事である。
(あんなに頑張ったのに!)
髪や肌、足の爪に至るまで、ミツは彼の為に手入れをして居た。可愛い顔とは言われるが、決して"美"が付くほどのレベルでは無い。だからせめて、磨くくらいの事はしようと決めて努力して居たのに。
それも全て無駄に終わってしまうとは。ミツは、悲しさを上回る虚脱感に身体を支配されながら、重い足取りで喫茶店を後にする。勿論、家に帰る為である。
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