好み

10/10
前へ
/414ページ
次へ
「将来、心結ちゃんが病気で禿げても、何かで太っても変わらず思い続けれるじゃん」 「極端……」 小西のセリフがあまりにも極端すぎて、ぷっと笑いが込み上げる。 でも、本当だと思った。 俺は、たとえ心結の容姿が何らかの原因で変わったとしても、気持ちは変わらないと誓えるよ。 だから、俺にチャンスが欲しい。 絶対に、心結のこと傷つけないって約束するから。 あの日、ヒロと別れたと電話で泣きじゃくる心結のこと、近くで抱きしめてやりたかった。 心に入りこんで、ヒロじゃなくて俺を置きたかった。 だから、今度は俺が幸せにしたいって思いは日々強まるばかりだ。 「お前、いままで好きな子と付き合ってこなかったろ」 「そうだな」 俺はずっとずっと、小さい頃から向かいの家に住む彩香のことが大好きだった。 でも、彩香の好きなやつは俺じゃなくて。 俺は、気持ちを伝えることもせずに、彩香の恋を見守るだけだった。 それでも、俺に告白してくれる人がたまにいて、付き合うだけ付き合って、虚しくなって、おわって。 その繰り返しだった。 だから、今度こそ。 好きな女の子と付き合いたい。 そう願うのは、贅沢なことじゃないよな。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加