決断

19/19
前へ
/414ページ
次へ
『理由は聞いたの?』 「ううん。もう、無理だったの……」 ちゃんと話をきいてあげればよかったのかもしれない。 どうしても行かなくちゃならない理由があったのかもしれない。 でも、もしもあたしのことが好きなら、先にあたしに話をして欲しかった。 あたしを納得させてから、元カノのところに向かって欲しかった。 優先順位が自分のほうが下だと言われているようで、悲しくて仕方ない。 『心結が決めたことなら俺はなにも言わないよ。でも、辛かったら溜めずに俺に言うこと。わかった?』 「うん、もう既に辛い」 悠貴の言葉に甘えて、すぐにかよって思われるかもしれないけど、弱音を吐いてみる。 『好きだもんな、別れたくなんて本当はなかったよな』 「うん、でもこのままじゃ多分幸せになんてなれないから」 本当は深みにハマる前に抜け出すべきだったんだと思う。 でも、あたしは最初にヒロがほかの女の子と仲良くしだした時にはもう、好きだったから。 1度手に入れた、ヒロという存在を手放すなんて出来なかった。 ヒロの笑う顔が大好きだった。 大きな背中が大好きだった。 ゴツゴツした手が大好きだった。 サッカーをしてるときの楽しそうな顔が大好きだった。 目を閉じれば思い出す。 いろんな、ヒロの顔。 どれも大好きだった。 でも、ほかの女の子の前でデレデレしているヒロは一番大嫌いだった。 だから、あたしはヒロから卒業するの。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加