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『理由は聞いたの?』
「ううん。もう、無理だったの……」
ちゃんと話をきいてあげればよかったのかもしれない。
どうしても行かなくちゃならない理由があったのかもしれない。
でも、もしもあたしのことが好きなら、先にあたしに話をして欲しかった。
あたしを納得させてから、元カノのところに向かって欲しかった。
優先順位が自分のほうが下だと言われているようで、悲しくて仕方ない。
『心結が決めたことなら俺はなにも言わないよ。でも、辛かったら溜めずに俺に言うこと。わかった?』
「うん、もう既に辛い」
悠貴の言葉に甘えて、すぐにかよって思われるかもしれないけど、弱音を吐いてみる。
『好きだもんな、別れたくなんて本当はなかったよな』
「うん、でもこのままじゃ多分幸せになんてなれないから」
本当は深みにハマる前に抜け出すべきだったんだと思う。
でも、あたしは最初にヒロがほかの女の子と仲良くしだした時にはもう、好きだったから。
1度手に入れた、ヒロという存在を手放すなんて出来なかった。
ヒロの笑う顔が大好きだった。
大きな背中が大好きだった。
ゴツゴツした手が大好きだった。
サッカーをしてるときの楽しそうな顔が大好きだった。
目を閉じれば思い出す。
いろんな、ヒロの顔。
どれも大好きだった。
でも、ほかの女の子の前でデレデレしているヒロは一番大嫌いだった。
だから、あたしはヒロから卒業するの。
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