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「心結、頼むから考え直してくれよ」
「無理」
「頼むって、好きなんだよ」
「無理だってば」
もう小一時間ほど、このやり取りを繰り返している。
場所は、あたしの部屋。
ヒロに別れを告げたはずのクリスマスイブの翌日。
お母さんが「ヒロくん来たわよー」っていつも通り部屋に通してしまって今に至る。
「俺、心結と別れたくねぇよ」
「今更だよね?」
別にいままでだって好きだと言われてこなかったわけじゃない。
それでも、態度なんてあたしが彼の彼女だなんて誰も信じないと思う。
「心結だって俺のこと好きなんじゃねぇのかよ」
横に座って、あたしの腕をぐいっと引っ張る。
「好きじゃ、ないよ」
好きなのに。
そんなことを言うのは、自分の胸が痛かった。
でも、ここで好きだなんて言ってたって何も変わらない。
「……っ、んなけねぇだろ。昨日まで好きだって言ってたろ」
「もう、他に好きな人もいるから」
そんな人もいないのに。
あたしはこうしね、ヒロへの想いに蓋をする。
もう溢れてこないように。
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