好み

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『俺に気なんてつかうなよー』 悠貴のそんな声は無視して、LINEを表示させて、アイコンにすべく写真を選ぶ。 「LINE、見てみてよ」 『え?……あ、変わった』 少しの沈黙のあと、悠貴のそんな声。 「変えるタイミング失ってたから。いい機会だしね」 『あ、隣の女の子……』 「ん?かすみ?」 アイコンは、かすみとのツーショットにしていた。 『タイプだなぁって』 「そうなんだ……」 かすみが悠貴のタイプだと知って、心の中には闇が広がる。 あたしのことを好きだって言ったくせにって、自分はこたえられないくせに、そんな感情が広がる。 なんて、ワガママなのだろう。 『俺、春には部活復帰出来んだよね』 「え、やったじゃん」 単純なあたしは、悠貴の明るいニュースに気分が良くなる。 『復帰したら、約束通り会ってな』 「……うん」 前にしていた悠貴との約束。 グラウンドで一度会ってはいるけど、ちゃんと会うのは初めて。 『その時、友達もつれて行くからかすみちゃんもつれてきてね』 「うん」 悠貴からの要望にちくんと胸が痛む。 もしかしたら、悠貴はかすみのことを好きになってしまうかもしれない。 でも、それを止める権利もあたしにはない。 『友達めっちゃイケメンだから』 なんて、自慢気にはなす悠貴。 紹介なんて、いらない。 そんなことは、自分の胸にしまった。
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