染まっていく7日間

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「え……。」 あまりに突然のことで、返す言葉が出てこない。 彼女は返事はまだか、と期待に満ち溢れた、満天の星空のように輝く目で僕を見つめる 時間が止まればいい、と僕は願うが、時計の針は僕のことなど気にも止めず、淡々と進んでいく。 「昨日のテレビ見た?」 「あぁ、砲丸投げ24時?」 クラスメイトたちは、教室の端っこの席で、お祭り騒ぎの大混乱状態になっている僕の心情のことなど気にも止めず、くだらない会話に花を咲かせている。できることなら僕もその会話に入りたかった。実は見ていた。砲丸投げ24時。いや、今はそれどころではない。 「えっと、それは、どうして…」 やっと絞り出した、掠れた声で言った。 彼女は一瞬キョトン、としたあと、フワッと笑みを浮かべた。 「あのね、私、徒歩通なんだけど、この学校自転車の人が多くて、1人で帰らなきゃなのかなーって思ってたんだけど、洸くんが弥生くんは歩きだって聞いたから。一緒に帰れたら、寂しくないなって思ったの。」と、上目遣いで、迷子の子犬のように心配そうに僕を見上げる彼女があまりにも可愛くて、つい、「そうゆう事なら、いいよ。」と言ってしまった。 ベランダに止まっている小鳥が、心臓は大丈夫なのか、今だって破裂しそうじゃないか、と僕に言っているように鳴いている。そうだ一緒に下校なんかして、僕の心臓は持つだろうか?でもその感情はわたあめに飛び込むような、フワフワとした幸福感にかき消された。
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