出会いの1日

5/10
前へ
/99ページ
次へ
「皆さん、おはようございます!」 担任の三谷先生のキレのあるハッキリとした声が教室に響いた。途端にピタリとざわめきがおさまる。 妙に張り詰めた緊張感が漂っているのは、やっぱり転校生のせいだろうか。 「立花さん。どうぞ。」少しだけ柔らかくなった声で、先生が言った。 下を向いて、 緊張ぎみに入ってきた少女は、すぐに僕らに背を向けて、カッカッと心地良い音を奏でながら、黒板に名前を書き始めた。 そして、こちらに向き直り、顔を上げて、 「立花小春(こはる)です。よろしくお願いします!」と鈴の音のような可愛らしい声で言った。 その瞬間、ワーッという歓声と、耳が壊れんばかりの拍手が教室をいっぱいに満たした。 彼女は噂どおり、いや、それ以上の美しさだった。柔らかそうな、フワフワのセピア色の髪を、肩につくあたりで切り揃え、華のある大きな目は、星空のようにキラキラと潤んでいる。そして、信じられないほど真っ白な肌をしていた。クラスのみんなは、彼女のその完璧な容姿に強く惹きつけられているのだろう。 だけど僕は違った。彼女の虜になってしまっているのは一緒だが、僕は彼女の色に、最も強く惹かれていた。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加