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「着いたよ。」
僕は石垣からグルリと周りを見下ろして言った。
「…そこから見える満開の桜、弥生くんの色にそっくりだなって、初めて見た時から思ってた。」
彼女が、大切な秘密を囁くように言った。
「僕の色ってどうゆうこと?」
まさか、彼女にも色が見えているのだろうか。それとも、僕の雰囲気や性格を色に例えているのだろうか。
「私も弥生くんと同じなんだよ。生まれつき人の色が見えるんだ。」
「どうして、僕の目のことを知って…。」
「それについてはもう少ししたらわかるよ。」
彼女が僕の言葉に強引に被せる。
「ねぇ、弥生くん。私はどんな色してた?」
彼女のこれまでの声色とは一変し、力強い声に聞こえた。
「…桜色。」
「弥生くんと同じ色かな?」
彼女が無邪気な声で聞く。僕には自分の色は見えないけど…。
「そうだったらすごく素敵だと思う。」
色が被っていると言う事例は見たことが無いけれど、心からそう思った。
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