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「良かった。最期まで綺麗なままでいられたみたいだね。」
電話越しでも、彼女がいつものような可愛らしい笑顔で、フワッと笑ったのがわかった。
待って、最期ってどうゆう事?聞いてないよ。詳しく説明して、なんて僕には言えなかった。僕は彼女に自分を晒け出せなかったんだから。最期っていうのも、心の何処かで薄々勘付いていた。
「小春、好きだった。」
飲み込んだ言葉の代わりに、無意識に心が伝えたがっていた言葉を口にしていた。
「私も好きだったよ。…バイバイ。」
プツンと通話が切れた。待ってくれ、まだ一番伝えたかった言葉が言えていないのに。
ありがとうが、言えていないのに。
偽りだらけの僕を愛してくれて、人を信じられない愚かな僕を受け止めてくれて、大切な親友を助けてくれて……。
「ありがとう。」
空に向かって呟いた言葉は僅かな桜と共に儚く散って行った。
携帯から発せられる通話終了を告げる音が残酷に鳴り続けていた。
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