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彼女の死から5日経った。僕との通話の後、彼女は手術を受けたらしい。成功率のかなり低いとても難しい手術だった。
あれから、僕は家族以外の誰とも会っていなかった。電話やメールで話してもいない。葬式にも行かなかった。死んでしまえば色は消えてしまう。僕の中の桜色の彼女に無色の彼女を上書きしたくなかった。彼女は僕の中では美しい桜色のままでいたいと思ったから、あの日僕を長野に行かせたんだと思うし。まあ、これはあくまで僕の予想であり、彼女の真意は定かではないが。
また、僕の脳裡にふわりと笑う彼女が蘇る。僕は、自分が思っていた以上に桜色に染まっていたみたいだ。
ベッドに横になったままで自嘲気味に笑う。すると、しばらく見ていない携帯が鳴っていた。
返信する気は無いが、一応画面を確認する。そこに表示されていた名前は、意外な人物のものだった。
「…菜乃花ちゃん。」
薄暗い部屋の中でボソッと呟いた。2通のメールが届いている。何故かはわからないが、このメールは見なければいけない。身体がそう訴えていた。
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