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「うまいけどな……俺は鍋なら水炊きが好きなんだよ」
誰も好みなんか聞いてない。図々しいな、この人。
「水炊きっすかー。食ったことないや」
池田は話を合わせた。なんとか機嫌を損ねないようにしている。
「もつ鍋、カニ鍋、ちゃんこ、キムチ鍋もうまいな。鍋の時期だよなあ。日本酒でやりたい」
すっかり雑談へと昇華させていく。案外、単純だったことに驚いた。それに、腹がふくれたはずが何故か喉をごくりと鳴らしてしまう……。
「まあ、今日は第1回なんで、次回はその辺をやってみます」
池田もなんだか悔しそうに言った。
「そうだな。でも、今日のは褒められたことじゃないぞ」
竹下はうどんを飲んだあと、一息ついて言う。すかさず池田が口を開く。
「校則違反にはならないでしょ?」
「そりゃ、校則に部室で鍋やるなとは書いてないしな……だが、火が危ないし家庭科室から勝手に器具を持ってきたのは良くない」
まったくもっておっしゃる通り。
俺は確認のため、そろりと訊いてみた。
「こんなバカなことをやるヤツは見たことないですか」
「ないな」
即答か。
俺と池田は顔を見合わせて口元を震わせた。やっぱりこんなことやるヤツはいないよなあ……
竹下も怒りを通り越して呆れている。
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