第1回なべろうの会

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 ***  とりあえず、北風吹きすさぶ寒空で立ち止まらせるのも可哀想だったので、俺たちはコンロを切って竹下教諭を中に入れた。 「何やってんだ、お前たち」  叱責のテンプレのような出だしだな。 「まあまあまあ」  池田は臆することなく、うどんをよそった椀を竹下に渡す。面食らう彼だが、手に取るしかない。 「寒いし、鍋しようかって話になっただけですよ。ほら、卒業したら家を出るわけだし、自炊の練習も兼ねて」  池田は調子よく言い訳を述べた。漂う出汁の香りに竹下は眉をひそめたまま椀を覗きこむ。 「自炊の練習なら家でやれ。というか、鍋自体家でやれ。なんで学校でやるんだよ」  おっしゃる通り。 「家だとお母さんがうるさいから出来ないっす。ほら、うどん冷めますよ」  さりげなく勧める池田。 「うまいですよ、先生」  俺も援護に回る。すると、竹下はやれやれと首を振って床に座り込んだ。仕方なくうどんを箸でつかむ。 「ゆですぎだろ、これ。でもまあ、味は悪くないな……」 「うまいでしょー。先生も腹減ってたんですね」  うどんをすする竹下はバツが悪そうだったが、しかめっ面を崩してしまった。うまいものを前にしたら、さすがの鬼も眉間が緩むか……。     
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