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第1回なべろうの会
どこを見ても、参考書と単語帳を持ち歩くやつらで埋まっている。かく言う俺もスマホアプリで入試講座の動画を垂れ流している。イヤホンで聴きながら。
家に帰っても良かったが、自分の部屋って自由空間だから気が抜けてしまうんだ。だったら学校の自習室で勉強らしきことをしていたほうが有意義だろう。
12月。終業式。学校自体は午前で終了だが、三年生たちには1分1秒が惜しい。来月には大多数がセンター入試を控えているから……
「おーす、斉藤」
ガラッとドアを引いて入ってきたのは、ぶすっと顔をしかめた池田だった。
しんと静まっていた自習室に突如入り込む異音。それによって、ピリリとした空気がほんの少し緩んだ。
「おう、遅かったな」
イヤホンを外して言うと、池田は「あー」とくたびれた声を上げて俺の隣にどっかり座った。崩れ落ちるように。
「廊下で竹下に捕まってよ……ちょっとシャツがはみ出てたくらいで説教だぜ。やってらんねーよ」
「どんまーい」
笑って返すと池田は机にだらりと寝そべった。
「なんか竹下、めっちゃ苛立ってたんだけど」
「そりゃーだって、お前が三年だからだろ」
「理不尽」
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