0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
※※※
まるでお花畑のよう、というのが、女学校に入学したわたしの所感でした。
お父様の事業の成功により、年頃になったわたしは、ある名門の女学校へ通い始めました。
けれども、穏やかな日々は……どこか、空虚でした、
周囲の方々との仲は、悪くありません。
木々の景色が変わることも、先生方の噂話も、少女小説の話題も、決して嫌なわけではありません。
(わたし、おかしいのかしら。夢二や華宵の絵は好きだけれど、どの絵がよいかなんて、そこまでじゃないわ)
毎年変わる流行色や、着物の柄、文壇や新聞をにぎわすスタァに関してなど。
華々しい話題の数々に、どこか気持ちが、ついていけなかったのです。
めまぐるしい景色という意味では、幼い頃から手伝っていた実家の事業と、同じようだと考えもしましたが。
(そうした慌ただしさは、みなさん、されていないみたい)
華族の子女と、事業家として成功した子女。
同じように資産を持ちながらも、そこには境目がありました。
ただ、大きないさかいを起こすこともなく、日々は過ぎていきました
――過ぎていくと、想っていたのです。
最初のコメントを投稿しよう!