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「仕事をクビになったんですか」
それは辛い! そう叫んで、諭吉殿は冷蔵庫から缶ビールと日本酒を持ってきたのです。
「そういうのはね、一回飲んでリセット。仕切り直しです。ビールと日本酒、どっちがお好きですか」
「どちらもいけますが、でもそんなお酒なんて」
「ええんです、ええんです。ちょうど私にとっても月一の晩酌の日ですから。なあ、一花」
「いつもは、私がお付き合いしているんですけれど」
無礼ながら、意外にも、諭吉殿はお酒とは上手く付き合っているようでした。芸人さんだから、そういうところはハメを外しているのかとも思うたのですが、そこは一花が上手に息抜きをさせてあげているようでした。
「変に節制をさせると、逆に飲んだくれになってしまうと思いまして」
「そういう考え方、ホントにお母さんそっくりだよ」
「ありがと」
「ま、そういうわけですから」
カシャリと、軽快にプルタブを開放した缶ビールを私に手渡します。
「今日は景気よくやりましょう。ええと……」
「福助、と申します」
「福助さん。縁起のいい名前だ。私は諭吉と申します」
乾杯、と私たちは缶ビールを突き合わせ、晩酌は始まりました。
つまみをどうぞと一花はポテトチップスやらさきいかを持ってくるものですから、とんと酒は進んでいき、あっという間にほろ酔いとなってゆきました。
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