第三章

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「兵隊さん」 最初、タケシは気づかなかった。 「兵隊さん、兵隊さん」 その〝兵隊さん〟が自分であることがわかったのは、腕を軽く引っ張られたからだ。 怪訝な気持ちで声の主の方を向く。 髪は煤けたように焼け縮れ、顔は赤黒く腫れ上がっていて、まるで化け物だ。 その恐ろしげな見た目に震え上がりそうになったが、何とか耐えた。 辛うじて足に纏わり付いているだけの、焦げたモンペらしい物を履いているのがわかり、やっと女だと気づいた。 「兵隊さん」 「な、何じゃ?急いでるんじゃがのぅ」 それは事実だ。 母から、兄のカツミが三日前から家に戻って来ないと、所属する陸軍部隊に泣きながら連絡があった。 こんな状況なら尚更 一刻も早く、生死を確かめなければならない。
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