第三章

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「兵隊さん、お願いがあります」 女は、掠れた声で切り出した。 「少し、ほんの少しでいいから、兵隊さんのお水をください」 火傷による水膨れなのか、パンパンになった指先が、タケシが肩から下げていた水筒を指している。 「喉が渇いて渇いて、たまらないのです。お願いします」 ヨタヨタと力なく頭を下げた。 水くらいならと、タケシは水筒に手を掛けようとして ふと思い出した。 『この度の爆弾にやられたら、水が欲しくて堪らんのんじゃと。じゃけど、どうしてか水を飲んだら死んでしまうそうじゃ。絶対に飲ませたらいけんらしい』 兄を探しに行く前、母たちの無事を確認する為に家に戻った時、親戚に教えられた話だ。
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