60人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
女は立っているのが苦しくなったらしく、膝をガクンとついた。
「お水…」
「飲ませてやりたいのは山々なんじゃが」
タケシは女の縋るような目付きに耐えられず、俯いて言った。
「聞いた話じゃと、この爆弾にやられた人間が水を飲んだら 死ぬるらしいで。辛いじゃろうが、堪えてくれんか」
「…ほんの一口でもだめですか…」
こんなに欲しがっとるし、一口くらい…と思いかけ、ダメじゃダメじゃと心を鬼にする。
「あんたも死にたくないじゃろう?早く家に戻りんさい」
「私はもう、無理です」
女はその場にヨタヨタとうずくまってしまうと、諦めたように薄く笑った。
最初のコメントを投稿しよう!