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「そんな、しっかりしんさいや」
「兵隊さん、私は本川町の中田 敏子と言います。私の両親に会うことがあったら、敏子はここで死んだと伝えてください」
「何を言いよるんか!諦めたらいけんで」
まるで遺言のような女の言葉に驚き 思わず怒鳴ってしまったのに、女はゆっくりとその場に身体を横たえた。
「…あぁ、喉が焼けそうじゃ。死ぬ前に一目、お母ちゃんに会いたかった」
「あんた、死ぬなんて簡単に口にしたら…」
ふと 焼け爛れた女の双眼と視線が交わって、タケシは言葉が出なくなる。
女は、タケシから目を逸らさずに言った。
「私が何をしたって言うん?何でこんな地獄に落ちんといけんの?」
「…」
「もうゴメンじゃ。日本が勝っても負けても どうでもええわ。私は、たった一口の水が飲みたいだけなんじゃ!」
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