第三章

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精一杯の力を振り絞ったように大きな溜め息をつくと、女はそのまま地面に突っ伏して動かなくなった。 本当に死んでしまったのか、それともまだ息があるのか、確かめる勇気はない。 タケシは暫く女の傍らに茫然と佇んでいたが、やがて居ても立っても居られなくなった。 頭の中はグチャグチャで、無意識に噛み締めた唇からは 鉄の味がする。 「う、うわぁーーーー!!」 衝動的に叫ぶと、逃げるように駆け出した。 「すまん、すまんのぅ!どうしようもないんじゃ!こらえて(許して)くれや!」 水を与えてやらなかった自分が悪いのか 罪のない庶民に、この地獄のような想いを与えた敵国が憎いのか いや違う 我国が勝っても負けても (いくさ)なんか どうなっても… カツミ兄貴! ワシはどうしたらいいんじゃ!!
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