第三章

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カツミが炎に包まれていく様を、タケシはただ、眺めていた。 最愛の兄をこんな形で葬っているというのに、取り乱すとか泣き叫ぶとか、そんな風にならない自分は まともな感情を失ってしまったのだろうか。 いや この川土手にいる誰もが同じだ。 人間として 恥ずべきか 責められるべきか それとも… 何が間違っているんだろう。 何が狂っているんだろう。 気づけば、何十もの遺体が川面に浮いていた。 「火傷の痛みから逃れようとしたり、喉の渇きに耐えられんようになった奴らが、水を求めてのぅ…みな、川に飛び込んでしもうたらしい」 カツミに念仏を唱えてくれた男は、タケシの目線の先を見て 独り言のように言った。 (いくさ)が続く限り この地獄を、また見るかもしれないのか… 『私は、たった一口の水が飲みたいだけなんじゃ!』 あの女は親族に会えたのだろうか。
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