第四章

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「申し訳ありません。せっかく貴重なお話をしてくださったのに…生徒たちが失礼な態度で」 語りを終え、連れて行かれた校長室の応接ソファに座っていると、教頭先生がしきりに恐縮して頭を下げた。 「いやぁ 最近の高校生は特に、自分たちが興味を持たない事柄には あからさまに無反応で。お恥ずかしい限りです」 「いいえ」 私は静かに首を振る。 「誰だってそうだと思います。こんな重い話より、楽しいことがたくさんありますから。私も昔は」 平和学習なんて、同じことの繰り返しが退屈だった。 何の意味があるのかとさえ思っていた。 まさか自分の祖父が、過酷な体験をしていたなんて知らなかったんだ。 祖父に寄り添うことをしなかった。 戦争を望む人間なんて いる訳がないと思っていた。 地球上の誰もが、好んで核兵器を持つ筈がないと信じていた。 結局 ちっとも「学習」していなかった。
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