Chapter 4

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「やあ、アニタ、こんにちは」 そんなエマの気持ちに気付く事もなく、男が陽気な笑顔を娘に向けた。 「こんにちは」 「お母さんとお出かけかい?」 「テトラおばさんのおうちに、ジャムを分けてもらいに行くの。お母さん、パンを焼いたから。お母さんのパンは、すごくおいしいの」 「アニタのお母さんは、料理が得意なんだね。いつも美味しい料理が食べられるなんて、羨ましいよ」 男は肩を竦めてみせた。 「おじさんも、どこかにお出かけ?」 「ああ、ちょっと、友達のところにね」 そう答えた男に、エマが鋭い視線を向けた。 「あんた、少し用心しなよ。妙な噂がたってるよ」 「あー……。いや、別に構わないんだが」 「構えよ。殺されたいの?」 「いや、それは勘弁だな」 あはは、と場違いに笑う。エマはネコ科特有の短い鼻に皺を寄せ、苛立ちを(あらわ)にした。 「どうなっても知らないよ」 再び影が通りすぎた。何とはなしに見上げると、先ほどと同じと思われるスパルナ族が悠然と風に乗っていた。 「……あいつらに爆弾でも持たせて飛ばしゃ、こんな居住区なんか一瞬で消えるだろうなあ」 「物騒なこと言うんじゃないよ!」 「ああ、なんとも物騒だ」 だから、あんなヤツらなどいない方がいい──あんな、裏切り者など。
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