Chapter 4

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いい季節になったと思う。何かを始めるにはうってつけの季節だ。 憲兵隊の姿がすっかり見えなくなった事を確認し、男は埃っぽい道をのんびりと歩きだした。 人ひとりがやっと通れる程の狭い路地を幾つか過ぎ、建ち並ぶカラフルなバラック小屋のうち、赤いペンキが塗られた何の変哲もない小屋へと入る。 薄暗い中、既に3人の男たちが(つど)っていた。 「よう」 男は笑顔で片手を上げたが、それに応える者は誰もいない。みな一様に険しい表情を浮かべている。 入り口近くに持っていた鞄をどさりと降ろし、その傍らに胡座をかいて座ると、それを見計らったように、一番奥に座った男が口を開いた。 「遅かったな」 言いながら僅かに顔を上げると、男の頭に生えている緩く弧を描いた2本のツノが、その動きに合わせてゆらりと下がった。 「憲兵隊が来ちまった」 「集合時間はもっと前だったろう、イザーク」 「そうか、すまねえ」 来た時のように愛想を浮かべながら片手を上げたが、誰もにこりともしなかった。 砂色の髪の男、イザークは、和やかな交流を諦めたようにため息をついた。どうやらここにいる男たちは皆、過度に緊張しているようだ。 「ちゃんと()も警戒しただろうな?」 「上?」 「スパルナ族」 とぼけるイザークに、わざと一語一語ゆっくり発音して答える。ツノを持つ年長の男、アーロンの苛立ちは、ピリピリと周囲の空気を震わせた。
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