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大袈裟に手を掲げてみせると、男たちの顔もそれとともに上がった。その様子が可笑しくて、つい小さく笑ってしまった。
「いいか、よく聞け」
咳払いをして笑いを納めると、イザークは表情を引き締めた。
「コイツはすごく貴重な植物だ。実をつけるのは3年に一度……いや、そんな事はどうだっていい。貴重なのは俺たちの仲間だって同じ事だ。犠牲は最小限に留めたい」
「対話か」
アーロンの言葉に、イザークは深々と頷いた。
「だがイザーク、人間が対話に応じなかったら?」
「女神を40人……いや、50人降臨させる。ただ、女神は気まぐれだからな。今回は9人すべてが見事な“聖獣”になったが」
「ダリオの件か」
アーロンが苦しげに息をついた。同胞殺しなど、悪夢以外のなにものでもない。しかし、立ち上がると決めたからには、時には無情な決断をしなければならないという事だ。
「戦争になるな……」
ぽつりと呟いたのは、猿の四肢を持つカールだった。
「切り札は俺たちが持ってる」
不安そうなカールをじっと見据えながらイザークが続けた。
「どうするかは人間たちに委ねる」
「場合によっちゃ、戦争も避けられないって事だな?」
このロジェの質問には、慎重に頷いた。誰もそんな事は望んでいない──だが、そうせざるを得ない局面に来ている事もまた事実だ。歴史は静かに時を刻んでいる。決して立ち止まったりはしない。
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