Chapter 5

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「夜会からの帰りに森で襲撃された。襲撃してきたヤツってのが、ヘルハウンドみてぇな狂暴性を持ったラクサーシャだった」 「えっ……ちょっ……襲撃!?」 「な、なんでアデルは、それ(・・)がラクサーシャだって思ったの?」 思わずニコラはアデルの方へと身を乗り出した。隣ではターニャが興奮で顔を真っ赤に染め、顎が外れそうなほどに口を開いている。 「ヘルハウンドにしちゃ、ずいぶんとおしゃべりだったからな」 「ねっ、ねえねえっ、それ、ほんとにラクサーシャだったの? 獣のフリした人間とかじゃないの?」 「人間の身体能力を遥かに越えてた──」 「おしゃべりだったって、何かしゃべったの? 何をしゃべったの?」 「ターニャ」 「なにっ」 「待て」 「んっ」 またしても反射的に口を閉ざし、ふと我に返る──自分はなぜアデルの「待て」に忠実に従ってしまうのだろう。 「俺が遭遇したのは、3頭とも豹のような体つきだった。スーツ姿の獅子といい、ラクサーシャが居住区から出てうろうろしてんのは、もう疑いようがねぇな」 「なぜ……一体どこから……」 「おいジーク、そいつを突き止めんのがテメエの役目だろ。命令しろよ」 「だが……」 「もたもたしてる暇はねぇぞ」 そんな事を言われても、何をどう、どこから手をつけるべきかさっぱり解らない。そもそもアデルには、時間をくれと馬車のなかで言ったばかりだ。 皆の目が自分に集まるのを感じながら、フェルザーは手の甲で額の汗をぬぐった。
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