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皆、不安なのだ。
何も判らない、これから先どうなっていくのか見当もつかない状況に、いきなり叩き落とされたのだ。訓練生だけでなく、将校も、総司令官も、政治家も、貴族も平民も、皆が暗闇の中で呆然となっていた。
無意識にイリヤは拳を握り締めていた。明日などと言わず、一刻も早く現地へ向かいたかった。
自分ひとりが、まだ「新兵」と称する事さえ躊躇してしまうような自分が行ったところで、何かしらの役に立つかどうかも判らない。
だが、ここでただじっとしている事が耐えられなかった。行かなくてはならない、行きたい、という思いが胸の奥底から溢れ出てくる。
ふと、周りを見た。
隣に立つマリウスも、ジルも、ジェレミーも、そしてハーヴェイさえも、顔色を失っていた。
世界は一瞬にして変わってしまったのだ。
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