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「これら3頭の体長は3メートルから5メートル。体重は800キロ以上。ばらつきはあるが、3頭とも大きな牙と頑丈な顎、鋭い爪を持っているとの事だ」
「あっ──」
鋭い爪と聞いたイリヤの脳裏に、自分に向かってくる爪がまざまざと甦った。
「……実際にヘルハウンドと対峙した兵によると、口元だけ見れば狼のようだが、その身体能力は、むしろネコ科の動物に近いそうだ」
そう、突如路地から飛び出し、セピの命を奪ったのはほんの一瞬の出来事だった。
「君たちが仕留めたのも、そうした特徴があったかな?」
「は、はい……」
固まってしまったイリヤに代わり、ハーヴェイが恐縮しながら答えた。
「巨体ながらもしなやかで、その気になれば建物の3階にでも飛び移る事ができそうでした」
「ふむ」
果たして自分の回答は隊長の気に入るものだったのか──デ・フレーセはぎょろりとした目を暫しハーヴェイに向けていたが、やがて手元の書簡に視線を戻した。
「居住区は、監視はずっと続けていたが、内部の状況はほったらかしだったのが現実だ。ヘルハウンドというものが突如発生したものか、あるいはもともと居住区内でこっそり匿っていたのか……」
「そのように狂暴なものを隠しておけるとは思えません」
フェルザーが静かな声音で言った。
「鉄条網さえも壊すような連中です。奴らを閉じ込めておくには、よほど頑丈な建物が必要でしょう」
「それに大量の餌も、な」
デ・フレーセは意味ありげに目を伏せた。
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