Chapter 3

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「ヘルハウンドは、人間を喰うらしい」 はっと息を呑む音が聞こえた。 「まあ、元来より肉食獣は存在しているのだから、さして特筆すべき事ではないな」 「喰われた者がいるという事ですか」 報告が上がっているという事は、その瞬間を目撃した者がいるのだ。問い(ただ)すフェルザーの目にもさすがに動揺の色が浮かんでいる。 デ・フレーセはゆっくりと瞼を開いたが、視線はどこにも定められていなかった。 「ヘイデンの伝令兵が2名、犠牲になったそうだ」 「……喰われたのですか」 「喰われていたところを他の兵士が見つけて殺害した……銃弾だけでは死に至らしめる事ができないようだ、胴体と首を完全に切り離す必要がある」 イリヤはふと、襲われた時の様子を思い出した。 まずアデルが落下する勢いでヘルハウンドの喉元を裂き、その衝撃で撥ね飛ばされたところに、マリウスの剣が首を分断した。 「おまえ……殺す方法知ってたのかよ?」 「いや、起き上がったら嫌だなって思ってさ」 こそこそと話したつもりだが、しんとした室内に二人の会話は筒抜けだった。デ・フレーセが短く笑い声を漏らした。 「偶然に助けられたか」 不本意ではあるが、マリウスの言葉によるとそうなる。 「まあ、新兵の頃というのは、不思議とツキがあるものなんだよ。経験を重ねるうちに、ツキなど不要になる」 自信たっぷりにターニャが言った。ターニャなりに、新兵を勇気づけようとしているらしい。
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