Chapter 3

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デ・フレーセの言葉を細かくメモしていたフェルザーは、そのメモを最初から読み直し、顔を上げた。 「これまでの話をまとめると、ヘルハウンドは体長3メートルから5メートル、体重800キロ以上。身体能力が非常に高く、人間を喰う。殺害するには首と胴を完全に切り離す必要がある……」 「そうだ」 「発生した原因は不明」 「まだ報告に上がってこないな」 「新たな発生は、今のところなし」 “今のところは、なし”── ふとデ・フレーセの心に黒い影がよぎる。 今の時点で、第2居住区を完全に(・・・)封じてしまえばいいのだ、これ以上被害が拡大する前に。第2居住区だけでなく、すべての居住区を封鎖すべきだ。やり方などいくらでもある……。 「以上が、イゾラ大尉からの報告だが、まだ事態は終息した訳ではない。フェルザー大尉」 「はっ。新たに伝令兵を出し、引き続き情報収集に努めます」 「こっちの居住区の警戒も怠るなよ」 「はっ」 「リュークヴィスト准尉を呼び戻してくれ」 「……は?」 フェルザーのみならず、皆がぽかんと首をひねった。 アデルは現在、ヘイデン地区の最前線にいる。事態は終息した訳ではない、と言った側から、なぜ呼び戻せなどと? 「実は明日、ジスカール侯爵の誕生日でね。知っているだろう、侯爵は軍に多額の寄付金を寄せていらっしゃる」 「いや、ですが……」 狼狽しながらも口を開いたのはターニャだった。
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