Chapter 3

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顎に手を当て、アデルは考え込んだ。 往復するだけでも最低4時間。「お誕生会」などに参加させられたら、更に1時間──下手したら2時間は拘束される。5時間も6時間も無駄にしろと言うのか。 「リュークヴィスト准尉──」 「いや、行かねえ」 「俺まだ何も言ってないじゃないですか」 「どうせ“戻れ”って言うつもりだろ?」 「当たり前じゃないですか」 なんなんだコイツは。 リナルドの無遠慮すぎる物言いに、アデルはひどく顔を顰めた。 その時、傍らで二人のやりとりを聞いていたニコラがぷっと噴き出した。 「おまえの負けだよ、アデル、戻ってやれ」 可笑しくてたまらない、とでもいうように、小刻みに肩を揺らしながら真っ赤な顔でニコラが終止符を打つ。一方アデルは眉を吊り上げた。 「テメエ、なに言って──」 「6頭は確実に仕留めたし、街へ出たのは10頭くらい(・・・)って、残りの1頭も本当にいるかどうか、曖昧な情報だしな」 「いると考えて行動すべきだ」 「それは確かにそうだけど、俺たちだってちゃんと動けるんだ。ちょっとは頼ってくれよ」 信頼していない訳ではない。ただ騒ぎが終息するのをこの目で見届けたいのだ。 アデルはぐるりと周囲を見渡した。太陽は沈み、燃えるような残照が西の空を紅色に染めている。あと数分もすれば、世界は闇に包まれる。
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