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視界を閉ざされる夜間は積極的な捜索をせず、班ごとにまとまってその場で待機する。これまでのところ、夜間にヘルハウンドが襲ってきたという報告はない。昼行性なのかもしれないが、まだ断言はできない。
「居住区周辺の監視は人員を増やしてるし、それに直接アデルから状況を聞きたいとも思ってるんじゃないかなあ。報告がてら行ってきなよ」
それに──とニコラは思う。正直、アデルには休息をとって欲しかった。
一般兵士は交替で休むが、上空から監視をするスパルナ族は、昼はもちろん夜間帯も巡視をしている。人数が少ないうえに「英雄」となってしまったアデルは、スパルナ族のなかでもリーダー的な存在であり、ここに来てからまとまった睡眠をとっている様子がなかった。
「それにこれは命令だろ?」
「部隊長命令です」
すかさず付け足したリナルドに、アデルは忌々しげに舌打ちした。
「明日といったか」
「はっ」
「何時だ」
「10時に部隊長のもとへ顔を出すようにと」
「ニコラ」
慈悲深い笑みを浮かべるニコラへ鋭い視線を向ける。
「明日6時に発つ。12時には戻る」
「え、計算が合わないよ?」
「急な呼び出しなんだ、2時間くらい前倒ししたって文句は言えねぇだろ」
言えない、というか言わせないんだろう、とニコラもリナルドも思ったが、二人とも口には出さなかった。
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