Chapter 3

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なぜ黙っているのか。 その問いに対する答えは、そう易々と出てくるものではない。形をなさない様々な疑問が次々と浮かび、いろんな感情がそれをぐるぐるとかき混ぜていた。 「私が、怖いですか」 怖い──そう、怖い。 この獅子がその気になれば、自分など簡単に()られるだろう。 「私のこの姿が、怖いですか」 「あっ──」 思わずニコラは小さく声を漏らした。 獅子のその一言で、それまで曖昧だった恐怖の原因が、ようやくはっきりと正体を現した。
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