87人が本棚に入れています
本棚に追加
なぜ黙っているのか。
その問いに対する答えは、そう易々と出てくるものではない。形をなさない様々な疑問が次々と浮かび、いろんな感情がそれをぐるぐるとかき混ぜていた。
「私が、怖いですか」
怖い──そう、怖い。
この獅子がその気になれば、自分など簡単に殺られるだろう。
「私のこの姿が、怖いですか」
「あっ──」
思わずニコラは小さく声を漏らした。
獅子のその一言で、それまで曖昧だった恐怖の原因が、ようやくはっきりと正体を現した。
最初のコメントを投稿しよう!