ボーダー

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「何が信じられないの?」 「えっ、何」  しかめっ面でコーヒーを飲んでいた彼女は、少しとまどったようにわたしを見た。 「『信じらんなーい!』って叫んでたじゃない」 「あぁ……」  彼女はバツの悪そうな顔になってマグカップを膝に載せた。逡巡する彼女を、そのまま待つ。今は昼休みだけど、カウンセリング・ルームに勤めるわたしにとっては仕事の時間。勤務日は出勤前に早お昼を取ってくる。 「……わたし、付き合っている人がいるんだけど」 「営業先で知り合った人……だっけ?」  彼女はコクリと頷いた。 「先週の金曜日、課の飲み会だったの。それはまぁ、いつもの感じで楽しかったんだけど。二次会でカラオケ行って、そこで一応解散ということで。帰ろうかなって思ってたら、いい感じのワインバーを知ってるって子がいて。まだ電車もあるし、ちょっと寄ってみることにしたの」 「そこで何かあったの?」 「ううん。ワインバーはいいとこだった。……と思う。あんまり覚えてなくて」  彼女は残っていたコーヒーを喉に流し込んで溜息をついた。 「……そこに行く途中でね。彼を見かけたの」 「彼氏さん?」     
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