私は兄の幸せを祝福することができない

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 毎朝、朝食のいい香りで目が覚める。  「葵ちゃん、おはよう。朝食できてるよ」  「おはよう、紫帆さん」  おいしそうな朝食と紫帆さんの笑顔が私を迎えてくれる。  「いつもありがとね」  「いえいえ~。さっ早く食べちゃいな~。学校遅れるよ!」  「は~い」  兄と紫帆さんが結婚し、私と一緒に3人で暮らすことになった。  始めは一緒に暮らせることが嬉しくてたまらなかった。  「あ、修一おはよう」  「おはよう、紫帆。あと、葵もついでにおはよ」  「なっ」  私についでに挨拶をしたこの男が私の兄、中野修一である。  「あれ、修一もう行くの?」  「ごめん。今日、朝から会議あるから朝ごはん食べていけないや」  紫帆さんのごはんを食べて行かないなんて、なんて奴だ。私なら遅刻しそうでも食べてから学校行くぞ。  「あ、待って。いつもの忘れてるよー」  そう言って兄に駆け寄って頬にキスをする紫帆さん。  昔から隣で見ていたから2人の距離が近いことにはもう慣れてるけど、結婚してから毎朝、兄にいってらっしゃいのキスをしているのを見るのはまだ慣れない。  「ごちそうさまでした。それじゃあ紫帆さん。いってきます」  「車に気を付けてね。いってらっしゃい」  
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