私は兄の幸せを祝福することができない

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 「はぁ~」  「まーた、紫帆さんのことで落ち込んでるし」    休み時間、また机に向かって溜め息をついていると、麗子が話しかけに来てくれた。  ほんと、この子はいい子だよなぁ。    「聞いてよ。私が気遣ってやってんのも知らないでまた悪態ついてきてさー」  「そりゃそうでしょ。あんたが勝手にやってることなんだから、知らないのは当然じゃん」  「まあそうなんだけどさ」  「いや、あんたの気持ちもわかるけど」    なぜか麗奈のこの言葉にムカついた。  「麗奈にはわ......でしょ」  「え? なんて?」  「麗奈にはわからないでしょって言ったの!」  「なっ、わからないってなによ!」  「わかるわけないよ。好きながただでさえ女の人だし、それに結婚してんだよ。勝ち目ない恋してる人のことなんて麗奈にわかるわけないよ!」  このとき、こんなことを言わなければよかった。  今はこのときのことを、とても後悔している。  「わかるよ」  「わからないって」  「私も好きな人が女の子なの! しかもその人には昔からずっと好きな人いるし」  「え?」  麗奈のこんな顔は初めて見た。  「その相手には絶対に敵わないってわかっているのに、好きじゃなくなることなんかできなくて」  「なに言ってるの? 敵わないって、なんでわかるの?」  「わかるよ! 毎日毎日その人の話ばっかり聞いてるんだよ! 私と話してるのに私の事は全然見てくれない」  さすがの私にもわかった。麗奈の好きな人は――私だ。  いつも私の話を聞いてくれていた麗奈の事を私は、自分のことばかりで全然麗奈の気持ちは考えてなかったのだ。  なにが一番の友達だ。友達を名乗る資格なんて私にはなかったんだ。
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