6人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ~」
「まーた、紫帆さんのことで落ち込んでるし」
休み時間、また机に向かって溜め息をついていると、麗子が話しかけに来てくれた。
ほんと、この子はいい子だよなぁ。
「聞いてよ。私が気遣ってやってんのも知らないでまた悪態ついてきてさー」
「そりゃそうでしょ。あんたが勝手にやってることなんだから、知らないのは当然じゃん」
「まあそうなんだけどさ」
「いや、あんたの気持ちもわかるけど」
なぜか麗奈のこの言葉にムカついた。
「麗奈にはわ......でしょ」
「え? なんて?」
「麗奈にはわからないでしょって言ったの!」
「なっ、わからないってなによ!」
「わかるわけないよ。好きながただでさえ女の人だし、それに結婚してんだよ。勝ち目ない恋してる人のことなんて麗奈にわかるわけないよ!」
このとき、こんなことを言わなければよかった。
今はこのときのことを、とても後悔している。
「わかるよ」
「わからないって」
「私も好きな人が女の子なの! しかもその人には昔からずっと好きな人いるし」
「え?」
麗奈のこんな顔は初めて見た。
「その相手には絶対に敵わないってわかっているのに、好きじゃなくなることなんかできなくて」
「なに言ってるの? 敵わないって、なんでわかるの?」
「わかるよ! 毎日毎日その人の話ばっかり聞いてるんだよ! 私と話してるのに私の事は全然見てくれない」
さすがの私にもわかった。麗奈の好きな人は――私だ。
いつも私の話を聞いてくれていた麗奈の事を私は、自分のことばかりで全然麗奈の気持ちは考えてなかったのだ。
なにが一番の友達だ。友達を名乗る資格なんて私にはなかったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!