最期の質問

Do you open the book?

　あなたに質問があります。
　今、あなたの目の前に一冊の本があります。あ、まだ開かないでください。これから説明しますので。
　あなたは今、お金に困っている。そうでしょう？この本を開くと、一生かかっても使いきれないほどのお金が手に入ります。ええ、開くだけで。ただし、あなたがいちばんよく知っている人の命が失われます。その人も、あなたのことをとてもよく知っている。どうです、開きますか？
　では開いてください。あ、もうひとつ大事なことが。お金は毎日100万円、死ぬまでお払いいたします。この本を開いてくだされば、今この場で今日の分のお金をお渡しすることができます。どうされますか？
　ではどうぞ、開いてください。はい、100万円です。明日からは、銀行の口座に振り込んでおきますね。では。お気をつけてお帰りください。
　あ、お客様……。そこに、ナイフを持った男がかくれております。お気をつけください。あ……だからお気をつけてと……。いえ、もうわたくしに責任はございません。殺されたのはお客さまのご責任ですよ。
　一生かかっても使いきれないほどのお金……。ほら、100万円も余りましたよ？それから……死ぬまで、というお約束でしたよね。わたくしはそれを守りましたので。
　お客様……。おや、もう完全に死んでいらっしゃいますね。最期にひとつ、質問があります。
　あなたがいちばんよく知っていて、あなたをいちばん知っている人。お客様は、それがどなただかご存じですか？それは……。
　あなたご自身ですよ。