それぞれの想い。

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 自分の母親と父親であると言うことだけは何とか理解した。  二人は俺に罵声を浴びせ続けた。  その代わり老父の秘書と名乗る九十九(つくも)と言う人が、入院中彼らが俺を責めた後にやって来て世話をしてくれて、そして細かいことを淡々と説明してくれた。  同情も無ければ親しみも持たない、例えるなら機械のような眼をしていた九十九さんだったが、そのときの俺には彼が一番楽な存在だった。  老父と男性は憎しみの混じった眼で看護師や医者には同情の眼で見られて気が滅入っていた。  九十九さんは俺が知りたいことをすべて答えてくれた。 「あなたは『一ノ瀬透』と言うお名前です。  先ほど病室にいた老父は俺の母方の祖父であり、彼が言っていた『薫』様はあなたのお母様で『灯吏』様はあなたのお父様の名前です。  関西弁の男はお母様の幼馴染でありお父様の親友です。  真実は分かりかねますが、あなたが信号を待たず車に轢かれそうになり、お2人はあなたを庇ったせいでお亡くなりになった、と考えておられます。  それを見たあなたはショックで記憶喪失になってしまった、と推測されます。実際はどうなのかは分かりません。     
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