それぞれの想い。

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 出席を取るときぐらいしか俺は名前で呼ばれることもなかったから、自分は『一ノ瀬透』なんだと自覚も薄いまま、まるで『一ノ瀬透』の器に入った『誰か』のような、そんな感覚で生きてきた。  そのまま、いつの間にか6年の年月が流れていた。  俺は、幸せになってはいけない。  そんな資格はない、だって俺のせいで二人は、両親は。  なのに記憶喪失になってしまった、そんな薄情な俺にそんなことは許されない。  自分の存在を、みとめてほしい、なんて、そんな甘えは許されない、許してはいけない、  これが俺の罪、法に裁かれることのない俺の罪、裁かれないのなら自分で裁かないと、いけないんだ  だから、平気な顔して、その罪を受け入れていかないと、自分を知ってくれる存在ももとめては、いけないんだ 「記憶とか関係なく、お前は『透』だからな!」  いつの間にか目の前にそう言って笑う、伊藤がいた。
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