あれ程見るなと言ったのに

4/56
前へ
/56ページ
次へ
 なってしまう。  なってしまいました。  私から言わせれば未熟な大人になってしまいました。  大切な友人さえも救えない大人。  すくえない大人になってしまったのです。  彼の大好きな箱根から一人で私は帰りました。  配達員の男を捕まえる為に、捕まえてどういうつもりか聞きたいがために、山へ消えていく宇和野大空を追いかけようともせずに、私は町に戻りました。  どうせ、直ぐに戻ってくると思っていたのです。  愚かでした。  いつも見たいに、ダルそうに、眠たそうに、なあ、メアリと何もなかったように来るものだと思っていたのですよ。  次の日に来なくても、その次の日には宙禅堂へ人形を持って現れるのだろうと思っていたのです。何の根拠も無いのに、それが当たり前だと思っていました。  あれから、巫女さんと五年生以降増えることのないまま、冬も終盤ですよ。  きっと、彼岸花を送ったと言う両親のもとにでも帰省しているのだと探偵らしく推理をしました。簡単な推理ですよ。やけに箱根に詳しい彼は近くに実家が有るのだろうと、そして、久しぶりに年末年始と帰ったのだろうと。  箱根駅伝が好きだと言っていましたし。  ですが、二月になっても来ない。     
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加