海女小屋

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海女小屋

「コナゴ、こっち向け」 海女小屋の(カシラ)、コダイが真後ろで言う。 コナゴは壁に向かって帯を解き、前をはだけた所だった。 「コダイ姐さん、おれ、着替えるんだ。」 首だけコダイに向けたコナゴの声は震えている。 「いいから。」 コダイはコナゴの肩をつかんでふり向かせ、衣を 肩からはずす。 「はっ…」 予想していたこととは言え、コダイは息をのむ。 少女の乳房には不似合いな、茶色みを帯びた色の乳首があらわになった。 「何すんの!」 コナゴは金切り声を挙げてコダイの手を振り払いしゃがみ込む。 「コナゴ」 コダイは優しく妹分を呼び、か細い肩に手をかける。 「(おな)()()たちがな、お前から するはずのない匂いがするというんだ。 母親のお乳をのんだばかりの赤子のような匂いが。 腹に子がいるんだな。 誰の子? あたしはな、御婆さんに話をしなくてはならんの。」 「分からんもの!」 悲鳴のような声を上げるとコナゴは 床に突っ伏して激しく泣き始める。 「そうか…」 背中をさすりながらコダイはしまった、と唇をかみむ。 誰か節穴から覗いていたのだろう、 砂を蹴立てる音がかすかに遠ざかっていく。 誰も居ないと確かめたはずなのに。
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