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「異物混入とかそういうのあると困るから、あたし店長さんに報告したよ。そいでみんなでいろいろ調べたんだけど、特に怪しいことはなかったし、お客さんから苦情もきてない」
探偵さんはがつがつ食べてるだけで、あまり役に立ちそうもない。
ただ、とんかつを全部平らげておじいちゃんのコーヒーを飲んだ後、
「パンの籠がひとりで動くわけないだろ、ばーか」
とだけいって、二階へ引き上げた。
◇
ってことは。
「つまり誰かが動かしてるってこと?」
あんながほっぺに手をやる。
「普通に考えたらそうだ。だれでも思いつく」
エースはあきれ顔だ。
あたしは二人に目配せして、力強くささやく。
「だから、あたし見張ってようと思う。見つけしだい、ふんじばってやる」
「ええ?」
エースは笑う。
「捕まえてどうすんの? 万引きしてるわけじゃねえし、何が悪いんだって居直られたら、めんどくさいぜ」
「そうだねえ」
あんなも首をかしげる。
「トラブルになって、お店に迷惑をかけたら困るよね」
「そんな……」
あたしは肩を落とす。夕べからふんじばる気満々だったんだけど、いわれればたしかにそうだ。
「でもさ、なんでそんなことするのか気にならない? あたし、超気になるんですけど」
「まあね。でも……」
ふたりは顔を見合わせる。
「じゃあさ、とりあえずふたりもそれとなく見張っててよ、見つけても声かけたりしなくていいから。あとで様子を教えるだけでいいから」
「店長にいう?」
あんなが聞いたけど、あたしは首を横に振った。
「忙しそうだし、大ごとになるから黙ってよう。真相があらわれて、それが深刻なことなら相談する」
「深刻ってなんだよ」
エースが鼻で笑うので、あたしはむっとする。
「例えば、泥棒の秘密の合図だったり、店をひそかに混乱させて注意をそむけたすきに、地下トンネル掘って銀行強盗するとか」
あんなとエースはまた顔を見合わせて、同時に吹きだす。
もう、真面目にいってるのに。
抗議しようと思ったとたん、レジにもカフェにもお客さんがやって来て、あたしたちはそれぞれの仕事に戻った。
どうしたって気もそぞろになる。
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