第1章

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 あせっているので、我ながら聞き返す態度がひどい。  「でさ、俺らの最終的な目的はなに?」  「え?」  「つか、女がどこに行くの突き止めて、それからどうすんのか聞いてんの」  あたしはエースから顔をそらせて、  「あー、えっとですねえ」  言葉をにごす。  「そんなのわかんないに決まってるでしょ」  さすが心の友、あんなが助けてくれる。  「みずきがそんなに計算したり考えたりできるわけないでしょ、もちろん行き当たりばったりよ、ねえ?」  「ま、まあね」  あんなは全然間違ってない。そう、あたしは全く考えてなかった。  しかし真実とは、こんなにも人を傷つけるものなのね……あたしって、本当のバカかもしんない。  「はあ?」  エースはまたあきれ顔だ。それでも3階へ上りきってから、  「あっちだ」  女の背中を見つけた。  門番のようにどっしり構えたナースステーション(幸いなるかな、無人だ)を気にしつつも、あたしたちは亜麻色のカーディガンが病室に入るのを見届けた。  3階の一番奥、312号室は四人部屋だ。入り口は開け放たれている。  あんながナースステーション方面を見張り、あたしとエースが入り口そばの壁に張りつく。  ちらっと中をのぞくと、間違いない、亜麻色の女が窓際のベッド付近にいる。  話し声が聞こえる。  「今日はいないみたいだった。暑い暑い。カーテン閉めちゃうよ?」  「……うん」  亜麻色女の子どもだろう。元気のない声が答えた。こども病院にいる子どもが、元気のないのはあたりまえか。  じっ、とカーテンを引く音がした。  「入院してるのに、あーくん日に焼けちゃうね」  がさがさ紙袋の音。  「ベーコンエピと、サーモンとクリームチーズのベーグルサンド、きれいね」  「エピだけでいいや」  「なあに? がっかりしちゃって」  「……別に」  「じゃ、お茶いれてくるね」  「おわっ」  あたしとエースはあわてて壁から離れる。全速力で突き当りの窓に寄って、さっきからずっと外を眺めてましたよっ、との演技に入る。  後ろを例の女が通り過ぎる。  角を曲がってすぐのところに、お湯や水の出る流しがある。お湯をついだり食器を洗う音を、どきどき聞いた。  再び女の足音が背中を通り過ぎ、病室へ入っていった。  あたしは再び、入り口の壁に張りつこうとするが、エースはじっと上を見ていた。
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