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黄色い帽子の小学生や、スモック姿の幼稚園生や、もっと小さい子たちや、赤ちゃんを抱っこしたおかあさんたちとかがいっぱい遊んでて、平和な公園の景色だ。ブランコやタコのすべり台も本来業務に忙しい。
「ここ、もともとボール遊び禁止だしな」
「どっか別の場所を探すしかないか……」
ため息をつきかけたあたしに、エースはにやっと笑った。
「だったら、おれんとこ来る? 庭あるし」
「あんた、ここの子になったの?」
行ってみるとそこは、たまに通る道沿いだ。
周囲に高い塀があってとても……(言葉を選ぶと)クラシックな木造の建物だ。正面の、鉄のおりみたいな門からからのぞくと、三角屋根の下に針が一本だけの時計がついてて、ホラードラマかなんかで見る、昔の小学校の廃墟みたい。
まさか、人が住んでたなんて。
エースはあたしを見て、ちょっと肩をすくめた。
「知ってるよ、まわりじゃ『お化け屋敷』って呼んでるんだって?」
「知っとりましたか」
近づいてよく見ると、やっぱりすごい。
高い塀は緑のつたに覆われ、その上にはぐるぐるの鉄条網まで乗っかってる。
門の鉄柵はあたしの背の倍くらい高くて、てっぺんは全部つんつんとがった矢印になってる。
「……なんか、入るのめっさ拒否されてる感が強いのですが」
エースはあたしをちらっと見て、
「おまえは大丈夫」
と門のわきのつたの中に手をつっこんだ。
― はい。
スピーカーを通した声がして、
「6号室のしげるです。友だちが一人入ります」
エースが答えると、
門が、
がちゃん、
と一回震えた。
飛び上がるくらいびっくりしたけど、あたしは素知らぬ振りをした。
エースが押すと、簡単に開いた。
あたしらが入って、エースが閉めると、再び、
がちゃん、
とドアが鳴った。
まさかの……オートロック? ここ何?
「ようこそ、きさらぎ荘へ」
あたしがびびってるのを見抜いて、エースはにやにやいった。
門から一歩入ると、表を通る車の音も消えて、気温までしんと涼しくなった気がした。
塀の裏側はみっしり木々が茂って、足元には苔が生えている。転々と四角い飛び石が建物へと続く。
「こういうのってさ」
飛び石を踏み外さないように、あたしは慎重に足を運んだ。
「サメのいる海に落ちちゃわないようって、トライしなかった?」
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