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裏庭は建物と塀にはさまれた、細長い場所だった。
でも、あたしはびっくり。
「広―い」
25メートルプールだって、3コースぐらい置けるんじゃないだろうか。確かにすさまじく草ぼうぼうで、建物際に洗濯物のはためく干し台がいくつか置いてはあるけど。
「ちょっと投げていい?」
エースはとっくに軟球をにぎりしめていた。
「気をつけてね。じゃあそれを見て考えようかな?」
物干しにもたれるように立って、高橋さんは腕を組んだ。
なんだかプロ野球の入団テストみたいで、緊張した。
◇
「そしてあたしたち、テストに合格しましたの」
出しゃばり気味に自慢する。
「ふうん」
ひぐっちゃんは窓枠に乗っかって、タブレットに何か打っている。すきを見てのぞこうとするけど、絶対見せてくれない。
「それであさって本格的に草むしりするの、お弁当持って。楽しそうでしょ、来たいなら、特別に来てもいいけど?」
おっさんは顔も上げない。また肌色の多い動画見てるのかな。
あたしは身を乗り出し耳元でささやく。
「りょーかんの高橋さんって、美人がいるよ」
「その手にゃあ乗らねえ」
タブレットを抱えるように隠して、やっぱり見せてくれない。
「ちぇー」
やさぐれてその場に寝っ転がると、やっとこっちを見下ろす。
「トム・ソーヤのペンキ塗り作戦じゃねえか」
「お、知ってた?」
起き上がって感心する。なんだかんだいって、この人、大人じゃん。
英語のテキストに出てきた。トム・ソーヤが言いつけられたペンキ塗りを、さぞ楽しそうにやって見せて、まんまとほかの子にやらせちゃうやつ。
ひぐっちゃんはまたタブレットにおっかぶさる。
「物置に電動トリマーがあるから使えよ。ジジイにいえば出してくれる」
「とりま……?」
「ちっこいチェーンソーみたいなやつ。細い枝ぐらいなら刈れる。でも、おまえみたいなそそっかしいのが使うと、13日の金曜日になって血の雨が降るかな」
「今、降らせてみる?」
ひぐっちゃんは恫喝に屈せず、タブレットを見せてくれた。
肌色じゃなくて緑色の多い写真。
「知り合いに、使わなくなった防球ネットを持ってるやつがいる。ちょっと遠いが取りに行ってやってもやぶさかではないが?」
「ははあ、ありがたや~」
きちんと座りなおして、あたしは深々土下座した。顔を上げて、
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