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「だからあたし、ひぐっちゃん大好き」
っていったら、ぷいと外を向いてしまった。
◇
あたしは「トム・ソーヤ作戦」をあきらめなかった。
草むしりやネット張りには、多大な人手を要する。
あたしの陰謀はなんとか成功して、智春さんは当日朝四時起きで、おおむね5人分以上の弁当をつくるハメになった。
ひぐっちゃんがお弁当と、ネット張りと草刈りの用具一式と、あたしとあんなを車で運んでくれた。
門の前にはカイが待っていた。背中のリュックが大きくふくらんで、両脇に大っきな四角いカバンを下げている。だいぶ重そうだ。
お弁当はこっちで出すっていったのに……何持ってきたのかな。
「やあ、みずき、元気そうだね」
口調が大人っぽいのがおかしい。
なんだよ、チビのくせに……ってからかおうと思ったけど、あれ? この子だいぶ背が伸びたな。でもまだ、あたしよりはチビだけど。
「鴎さんは?」
って聞いたら、偉そうに鼻からふん、って息を吐いた。
「今日は、僕ひとりで、電車で、来た」
それ、えばっていうこと?
おかしかったけど、あたしはあえて突っ込まない。
生まれた時から、運転手付きの自動車で移動するおぼっちゃんの生活なんて、あんまりよくわかんないし、それほど興味もないからだ。
こういうとこ、あたしホント大人になったよねえ。
でも専属運転手の鴎さんはとってもいい人だから、会えなくて残念。
「おはよう、松宮くん」
少し赤い顔で、あんながカイに挨拶した。ツインテールには透き通った緑色の髪飾り、パステルグリーンのスポーツウェアでいつにも増してかわいい。カイとは、たまにいっしょに遊ぶので顔見知りだ。
「またまた碑文谷さん、カイでいいって」
「じゃあ、あたしもあんなでいいよ」
この子たち、会うたんびにこういう会話してる気がする。
しかし、あんなはどんな男子とでも、話すと真っ赤になるな。見てて面白い。
乱れてもいない髪を、カイは気取ってなでつける。
「だってみずきの親友なら、僕には奥さんの親友だろ」
「!」
背中がぞわっとなって、あたしは口も聞けない。
すると、目の前でカイの体がリュックごと宙に浮いた。
「うえっ」
ひぐっちゃんがカイのシャツの胸をつかんで、軽々目の高さまで持ち上げた。
「おはようございまーす、松宮のおぼっちゃまあ」
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