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口は笑っているけど、サングラスをしているので目はよくわからない。
「あう、ひぐち……さん、あう」
男どもがばたばたやってるのを無視して、あたしはつたの中へ手をつっこむ。
― おはよう、みずき。
すぐにエースの声が響いた。
「すごい、テーマパークのアトラクションみたい」
あんなもカイの心配を中断して、感心した声を出す。
扉が開くと、ひぐっちゃんはカイを下ろした(つき落とした、ようにも見えたけど)。
車から、次から次へ荷物を出して門の前に置く。全部を下ろし終えるとぽんぽん、手を払った。
「じゃあガキども、せいぜいがんばれよ」
車に戻ろうとする。
「え?」
あたしは汚いコートをつかまえる。
「ちょっとどこ行くの? ポール据えたりネット張ったり、子どもだけじゃできないよ」
「くっつくな、バカ」
あたしを引きはがして、ひぐっちゃんの声は冷たい。
「甘えんな」
ポケットから折りたたまれた紙を出した。
「やり方はここに書いておいた。道具もある。少しは頭と体を使ってみろ」
カイがにっこり、ひぐっちゃんの前に立つ。
「どうぞお任せください。僕がみんなのケガのないよう指揮します」
あからさまに無視して、ひぐっちゃんは門の中を見た。
「おはよう、樋口さん」
出てきたのは高橋さんだ。そのうしろにエースがいた。
あたしが手を振ったら、はずかしそうに高橋さんにかくれちゃった。
ひぐっちゃんは大人みたいなまじめな顔で、
「無理いって悪かったな。じゃあガキどもを頼む」
とだけいって、車に戻っていった。
高橋さんは首を横に振って何かいいかけたけど、車はさっさと出発してしまった。
あたしは……何をいっていいのか、わかんなくなった。
ふたりが顔見知りで、それもかなり親しげで、それをあたしに教えてくれなかったことが、軽いパンチみたいに心に食い込んだ。
「みずき?」
あんなに顔をのぞかれていた。
「やあやあ、みずきがいつもお世話になってます」
その向こうでは、カイがエースをつかまえて、ぶんぶんむりやり握手している。
あたしはにこっと口の端をつり上げ、
「じゃあ、みんなで手分けして荷物を運ぼうぜ!」
裏返った声を張り上げる。
◇
草刈りだけで午前中いっぱいかかった。草刈りって、刈るよりも刈った草を集めたりビニールに詰める方がずっと大変。
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