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白い押し花の今の色
「行ってきます」
そう言ってドアを閉じて、駆け出した。
カギは閉めてくれるだろう。そう、彼の仕事をささやかに増やす。
表札には林原白と私の名前が
結婚して同居するようになったのは最近だけれども、もともと半同棲をしていたから特に何かが変わったわけではない。必要なものを実家から選別するために、大掃除をするのは大変だった。その程度の苦労である。
掃除をしていると懐かしいものがどんどん掘り当てられるわけで、卒業アルバムやら文集やら、はたまた当時やり取りしていたノートの切れ端だとかの学生時代の思い出に直面して、手が止まるのは仕方のないことだった。
中でも目に留まったのは、ある手紙に書かれた短い文であった。
「今の幸せは何色?」と書いてある紙は、他の手紙と同じようにドット入りルーズリーフの用紙を破ったものに見てとれて、紙の右下には小さく「ハナ」とだけあった。
今となってはどうなっているか分からない彼女と会える機会となりうる同窓会の前に、この手紙を見つけられたのは良かったと思う。
小走りで飛び込んだ電車が目的地につくまでは少し余裕があった。これを期に思い返してみるのもいいかもしれない。
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