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白い花の今の色は会ったときに聞いてみよう。
もう随分前の頃だ。高校生だったときには、私には彼女がいた。今居花という。
ここで言う彼女は、恋人としての彼女だ。無論、私は女で、彼女も女。
「しーろっ!」
放課後の美術室で、絵を描いていると後ろから、ハナに名前を呼ばれながら抱き付かれた。演劇部で体を動かしたのか、少しの汗の匂いとほんのりとした柔軟剤の香りがした。
「なに。ハナ?」
顔を後ろに向けずに聞いてみる。
「ふふっ。呼んでみただけー」
呑気そうな声が返ってきた。ハナは私から一旦離れ、近くから椅子を取ってきたようだ。
「また、恋人みたいなことを言って」
ペンを持ち直して、手元の作業を再開する。
「みたい、じゃなくてそのものでしょーが」
分かっている。なんとなく茶化して言ってみただけ。
「どう?絵は進んでる?」
私の頭の上の方からハナの質問が飛び出る。
「見た通りだよ。あんまり進んでないよ」
「百合の花、少し枯れてきた?」
百合の花を題材に組み込んでいるので、花瓶に少ししなびた花があった。
「そうかもね。ちょっと時間が経ちすぎちゃたかな」
「そっか」
そう呟くとさっきの椅子にハナは腰を掛けて、私の長い髪を弄り初めて、黙った。
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