さよなら、愛しき日々よ

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 俺の言葉に、優斗はまた夜空に浮かぶ月を見上げる。その横顔は綺麗で、そして寂しそうに見えた。  六年間、こうやって同じ寮の部屋で一緒に過ごしてきたのに、どれだけそばにいても優斗の存在が遠かった。  何度肌を重ねても、どれだけ名前を呼んでも、彼の心を捕まえることは出来なかった。 「この前、入学した気がするのに、六年なんてあっという間だったな」 「そうだな。……優斗は、卒業したらどうするんだ?」 「……達也は?」  優斗は俺の問いには答えず、逆に尋ねてきた。だから俺は、底抜けに明るい声で答えた。 「卒業したらさ、一緒に温泉行こうぜ」 「温泉?」 「そう。旅館に泊まって温泉入って布団並べて寝ようぜ。温泉入って布団並べて寝てさ。あ、でも男二人で泊まったら変に思われるかな」 「別に、友達とだって旅行に行くことぐらいあるだろ」  それもそうかと思った達也の隣で優斗は小さく笑った。  その笑顔がどこか寂しそうに見えて、俺はわざとらしく声を張り上げた。 「あーでも、もっと遠いところもいいな。沖縄とか、北海道とか」 「……アメリカとか?」 「っ……そうそう! アメリカもいいなー。やっとここから出られるんだ。行きたいところはいっぱいあるさ」     
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